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「くるみちゃん、こっち!」
「ごめんなさい、少し遅れちゃったかな?」
「いや、俺が早く着いてしまっただけだよ」
今日も爽やかな笑顔を浮かべながら、私に優しい言葉を掛けてくれる誠さん。
背が高くてスタイルも良く、ファッションセンスも抜群で、頼りがいがあって性格も温厚。
黒縁の眼鏡も知的な雰囲気を漂わせて、更に輝いて見える。
「くるみちゃんの好きなアールグレイ頼んでおいたよ。あと、いつものチーズケーキも」
「ありがとうございます」
御礼を言って椅子に座り、テーブルの上に置いてあった水を一口飲む。
氷が少し溶けてグラスが濡れている。
彼は、かなり前からここで私を待っていたのかもしれない。
すぐに私のために注文してくれていた品がやってきて、目の前に並ぶ。
そして彼はいつもと同じアメリカンコーヒー。
角砂糖を二つ入れるのが彼の好きな飲み方だと知っているので、テーブルの端に置かれている角砂糖の入った小瓶を差し出した。
白と茶色の角砂糖を一つずつ選んでカップへ入れ、スプーンでそれをよく掻き回している彼に問いかけてみる。
「あの……話があるって、言っていたのは?」
「ああ、それなんだけれどね……」
そう言うと、彼の表情が急に曇った。
鈍感な私でも分かる。
今から彼が告げるのは、私が想像していたような甘い話ではないということを。
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