Act 0 〜Prologue〜

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「先が見えない中で、くるみちゃんを待たせるわけにはいかない。勝手かもしれないけれど、もう決めたんだ……」 「……」 「……実家の住所、後で知らせるから。たまに連絡をくれると嬉しい」 「うん……」 ああ、そうだ……。 こういう真面目な人だから、好きになったんだ……。 今すぐには難しくても、お互いが想い合っていれば、いつかまた肩を並べられる日がやって来る。 私たちは終わったのではなく、新しいステップに踏み出したんだ……。 持ち前のポジティブ思考で、そう解釈して自分を納得させていると、彼は気まずそうな顔をしながら、付け足すように言ってくる。 「あと、もうひとつだけ……頼みがあるんだ」 「頼みですか?私で力になれることなら……」 「前に、親父の入院費の足しに借りていたお金、返すのをもう少し待ってもらってもいいかな?今月の末には必ず返済するから、どうか……」 そう言って、彼は頭を下げてくる。 そこまでされると、まるで私が悪者のような視線を周囲から浴びせられてしまい、焦って席を立って彼をなだめる。 「ちょっと、誠さん……!」 「こんな我儘を頼めるの、くるみちゃんしかいないから……」
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