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「先が見えない中で、くるみちゃんを待たせるわけにはいかない。勝手かもしれないけれど、もう決めたんだ……」
「……」
「……実家の住所、後で知らせるから。たまに連絡をくれると嬉しい」
「うん……」
ああ、そうだ……。
こういう真面目な人だから、好きになったんだ……。
今すぐには難しくても、お互いが想い合っていれば、いつかまた肩を並べられる日がやって来る。
私たちは終わったのではなく、新しいステップに踏み出したんだ……。
持ち前のポジティブ思考で、そう解釈して自分を納得させていると、彼は気まずそうな顔をしながら、付け足すように言ってくる。
「あと、もうひとつだけ……頼みがあるんだ」
「頼みですか?私で力になれることなら……」
「前に、親父の入院費の足しに借りていたお金、返すのをもう少し待ってもらってもいいかな?今月の末には必ず返済するから、どうか……」
そう言って、彼は頭を下げてくる。
そこまでされると、まるで私が悪者のような視線を周囲から浴びせられてしまい、焦って席を立って彼をなだめる。
「ちょっと、誠さん……!」
「こんな我儘を頼めるの、くるみちゃんしかいないから……」
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