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陽が傾き始め、周りの人々も少しずつまばらになってきた。
今年もコミケが終わりを告げる。その間際に、私の元へ若い女の子たちがやってきた。彼女たちは私のように『お嬢様』に憧れているコスプレ仲間だ。お互いにドレスを見せ合って意見を交わす。私は初めてロンドンに行ったあの日からコスプレをやり続けている、彼女たちに教えられることは多い。
彼にはあれからも度々会いに行っている。結婚してからは夫や子供たちと共に、この間は孫の顔も見せてあげた。
たまにはそっちから訪ねて来てよ、と私は彼に会うたびに言うのだが、彼はいつも拒むのだった。
「こうしてお嬢様が来るのをひとり待つのも、結構楽しいんですよ」
だから私は今年も行かねばならないのだ。
あの黒いお屋敷に。
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