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ホテルに戻ってから私はインターネットで黒いお屋敷について調べてみた。
すぐに個人ブログがいくつも見つかった。その黒い外観から「ドラキュラ屋敷」などと呼ばれていた。
ネットニュースにも取り上げられていて、三年ほど前の記事にお屋敷が建てられた当初のことが書いてあった。若い新婚夫婦が奇妙な家を建てて貴族ごっこをして暮らしているという内容で、その夫婦の写真も載っていた。女性の方はシルクのような金髪をツインテールにしたお嬢様で、澄ました顔がお人形みたいに可愛かった。そして執事はあの男だ。実際に見た顔よりも穏やかな表情で写っている。どうやら彼は主と結婚していたらしい。
バックナンバーを探りお屋敷の記事を古いものから順に見ていく。代り映えのしない内容ばかりだったが、突然に毛色の違う記事が出てきた。
『ドラキュラ姫 暗黒の海に消える』。
黒いお屋敷の家主が仕事で単身アメリカへ飛んだ、その帰りのヘリが夜間に大西洋を横断中に行方が分からなくなってしまった、翌日すぐに捜索が行われた、しかし不思議なことに痕跡は何一つ見つかっていない、とのことだった。残された夫は妻の帰りを信じて一人で家を守っている、最後はそう締めくくられていた。
これより新しい記事はなかった。
あの執事は今もなお主を一人で待ち続けているのだろうか、そう思うと胸が痛んだ。そしてベッドに潜り込むと、涙が出てきた。この時になってようやく自分の気持ちに気が付いたのだ。
お屋敷に惹かれて再訪したつもりだったのだが、どうやら違っていたらしい。
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