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「できた! ネイト先生、見て!」
問題が解けた、と“レティ”が両手を上げてアピールする。
“レティ”は生産されて十三年経つ。人間として言うなら十三歳か。
当然ながら一般人のように学校に行くことなどはない。あくまでもメイサが空き時間に教える程度でしかなかった。
そのため、同年齢の普通の人間と同じ知力・学力とは到底言えない状態ではある。
しかし実際に教えてみると、このクローンは非常に優秀な『生徒』だった。調べた結果IQが高い。
オリジナルはどうなのだろう。一卵性双生児でも、知能は完全に同一とは限らないのだ。
大学で研究の傍ら教鞭を執っていた経験からも、なんであれ吸収の早い相手に指導するのは楽しくさえあった。
「ん-? おお、ホントにできてる。凄いな、“レティ”」
「わたしすごいの!? 嬉しい! 先生大好き!」
身体ごと左腕にしがみつくようにして、満面の笑みで告げられて困惑する。
「……そういうことは言っちゃダメだ」
「どうして?」
見上げてくるきょとんとした表情と透き通った瞳に、ネイトの中の何かが揺らいだ。
「どうしても! ──えーと、『女の子』は慎みが必要だから!」
「……? なんか全然わかんない、けど先生が言うならやめる」
自分でも何を意味不明なことをと思いながらも、表面的な説教じみた言葉を並べる。
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