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「……う、ん?」
真夜中、ベッドの中で惰眠を貪っていたところを耳障りな呼び出し音に起こされた。
『ネイト! いま部屋か?』
マックスの声だ。
常に低温を保っているかのような彼が、いつになく慌てているのが伝わって来る。問い掛けの内容からも。
「そうです。寝てました。他にどこに行けと?」
研究所のスタッフは全員この宿舎での居住を義務付けられている。この生活も、もう二年が過ぎた。
相当広いとはいえ、敷地内から出ること自体がまず許可されない。
しかし必要なものは申請すれば、審査は経るが「立場上、明らかに非常識」なものでなければ大抵は支給された。
ネイトは申請したものを却下されたことは一度もない。
殊に研究に関しては、「金に糸目をつけない」という意味をここに来て初めて知った気さえする。望めばどんな機材や資材も、理由も問わず揃えてくれるのだ。
むしろ『外』の、ネイトが足元にも及ばない名のある教授より恵まれた環境かもしれない。
彼らの多くは、大学側と研究予算を巡り常に苦労を重ねているのを知っているからこそ。
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