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 食事もすべて供されるし、希望すれば身の回りの雑事、──掃除や洗濯も任せきりにできるので、自由がないことに目を瞑れば特段の不便はない。  ネイトは居室内のことは自分で賄ってはいたけれど。    まるで囚人のようなと忸怩(じくじ)たる思いを持っていたのは最初だけだ。馴染んでみれば、意外なほどに過ごしやすかった。  だからと言って、何もかも好き勝手にはいかないし、家庭を持つのは無理だ。それも含めて、人生を売ったと思っている。  しかし内情については、言うまでもなくマックスの方が熟知している筈なのにどうしたというのか。  半ば寝ぼけていて(いささ)か失礼な返答になってしまったが、彼は気にする余裕もなさそうだった。 『“レティ”の「出荷」要請が入った! オリジナルが事故で重体だそうだ。すぐ来てくれ!』 「は、はい!」  あまりにも衝撃的な知らせに、眠気など瞬時に吹き飛んでしまう。  着替える暇さえ惜しく、パジャマ代わりの部屋着の上に丸めて放り出してあった白衣だけ羽織って、ネイトはドアを開け自室を飛び出した。  研究所は宿舎のすぐ目の前だ。  ──“レティ”、お前は。……俺、は?
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