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「カーライル家の当主様が“レティ”を引き取りたいそうだ。亡くなったオリジナルの代わりとして。これぞ『スペア』本来の使い方かもしれないな!」
皮肉たっぷりに吐き捨てるようなマックス。彼がここまで感情を露わにするのは珍しい。
「……そんな、こと」
いったい何を言っている?
握り締めた拳の震えが止まらない。
目の前の先輩ではなくカーライル、……オリジナルの父親に対しての名称の付けられない感情が今にも溢れそうで制御できなかった。
「私の、ここに来てから八年間の経験では無論のこと、記録で見た限りでも例がない。前代未聞だよ。高貴な方々にとっては、何よりも『血』が大事ってことなんじゃないか? 遺伝的にはまったく同一なんだからな、間違いなく」
ネイトの様子を見て内心を察したのか、マックスが述べる。
おそらく間違ってはいないのだろう推論を。
「カーライル家の子どもは死んだ娘しかいなかった。やはり名のある家の出だった当主の妻は早くに亡くなっていて、両方の家系の血を受け継ぐ人間は存在しないし、もう『作れ』ないんだ。“レティ”以外には」
血。遺伝子。
何故そういう話になる!? 『娘』の代替という発想自体が理解不能だ。
ネイトの感情は脇に置くとして。
当主にとってはスペアであり複製でしかない“レティ”はまだしも、生まれたときから慈しんで育てた『筈』の実の娘さえ、単に血を途切れず繋ぐための道具でしかないということか?
こんな風に思うのは、ネイトが過去から未来へ延々と継いで行かねばならぬものなど何も持たない身だからなのか。
「結果的にはメイサが言葉や文字や、……『人間』として必要なあれこれを教えたのが正解だったんだな」
ああ、そうか。
これが他の、例えば“R30”ならば?
遺伝情報が一致する以外には知性も何もない彼を渡すことができるのだろうか。
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