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◇ ◇ ◇
もうすぐ、カーライル家からの迎えが来る。
その前にどうしても、“レティ”と二人きりで別れの挨拶だけでも交わしたかった。
本人は口を噤んだままだがマックスが裏で動いてくれたらしく、短時間でもどうにか面談が叶ったのは僥倖だ。
一般的とは表現し難くとも、彼には彼なりの『人間味』はあるのだと先輩研究員に感謝した。
前もって届いた衣装に着替えさせられた“レティ”は、初めて袖を通した鮮やかな色の服に喜色満面だったという。
情報を完全に遮断されていたわけではない。当然ながら検閲の結果ではあるにしろ、“レティ”は「一般社会」の姿も画像や動画を通して多少は知っていた。
生まれてこの方、実験体用の無粋な白い服しか着たことがなかったのだから、さぞや嬉しかったことだろう。
詳しい事情を聞かされるまでの、束の間の歓喜でしかなかったようだが。
瞳の色に合わせたのか綺麗な青紫のドレスに、垂らしたままの金髪が映えて眩しいほどだ。
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