【Epilogue】[V ⇔ N]

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【Epilogue】[V ⇔ N]

「Mr.カーライル。後継者については心配ご無用。私どもの専門は医療ですよ」  Regen()erative() Medi()cine()。  曲者の上司が見つめ合う二人を横目で見やり、大真面目な顔で口にした。  アンドリューに対しては後継の不安を払拭し、同じ言葉の裏でネイトとレティにはまた違う二人の関係の『再生』を示唆する。  この「家」を守ることが、ひいては二人の幸せに繋がるのなら。  たとえ歪な社会の中での形式的な地位に過ぎなくとも、ネイトにとっては代え難く大切なものになる。  アンドリューが何らかの合図を送ったのだろう。  部屋の外で控えていたらしい執事がノックのあとに入室してきたのに、当主が端的に命じる。 「ウィリアム、ジュリアを。ヴァイオレットとDr.ブライトを部屋へ」  こちらも「はい」と短く答えた彼がまた静かにドアを開けて姿を消し、しばらくして小柄な若いメイドが顔を見せた。 「お待たせいたしました。お嬢様、ブライト様。それではお部屋へ」 「Dr.ブライト。私はご当主とまだ詰めることがある。君はお嬢様と外してくれまいか」  一瞬躊躇したネイトに言い聞かせるように、マックスが補足する。 「わかりました。では──」  正面に掛けた“レティ”と視線を合わせて、ほぼ同時に立ち上がる。  そしてネイトは「お嬢様」とともに、ジュリアというらしいメイドにヴァイオレットの私室に案内された。
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