第一章ープロローグ【始まりのアルケ街】

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unknownside──── 黒野という可愛らしい少年は自分を普通だといった。 しかし、正直“普通”とは何を持って“普通”なのだろうか。 黒野くんの見た目は周囲の男子生徒と比べても背が低く、童顔で女顔も相まって可愛らしい。成長期を迎える直前の男児特有の一瞬の美しさ───中学二年生になり周囲が成長を見せる中、少女のように中性的な彼は珍しいといえば珍しかった。 それは絶世の美と言うものではないが普通ではない。しかし広い世界で言うなら──彼が言うように“普通”とも言えた。 ただ“広い世界で言う”普通。それは彼の美しさが外国人のような系統ではなく、あくまで日本人的なあどけない美しさだったからだ。世界で1番好まれるのは目鼻立ちのはっきりした彫りの深い顔だろう。好みはそれぞれだが客観的にみるならばそれが一般的だ。 けれど、彼の本来の魅力は見た目ではない────。 というのも、その内面から滲み出る優しい美しさはただ可愛らしいだけの彼に紛れもない輝きを与えた。 彼の内面の美しさは────優しさ 危うさ 男らしさ 素直さ 等多岐にわたった。 例えば、都合が悪くなっても妹の為に何度も懲りずに手を貸す優しさ。 例えば、その優しさは身内だけで留まることは無く、どこまでも手を伸ばし届く範囲は全て助けようとするような危うさ。 例えば、彼が自分の持って生まれた顔や周囲よりも低い背丈を男としてマイナスに捉えておらず、両親から貰ったものだからと嬉々として磨きをかけに行く潔の良さ。 例えば、彼の愛嬌が頗る良く、素直なこと。 例えば………そんな誇れる内面を持つ彼の笑う姿は別格の輝きを放っていること。 そして例えば────そんな彼の人生の多くはその絶大な癒しを与える優しい表情で笑っている事が多いこと。 挙げだせばキリがない程、内面には魅力が詰まっている。 可愛らしい少年が滲み出る内なる美しさを纏わせて笑う姿は、国外のイケメン俳優にだってきっと負けないくらい輝いている。 見た目をいじられる事も少なくは無く、ことある事につつかれていた。そんな時出会ってすぐの頃皆になにか言ってやろうか?と問えば『複雑だけど冗談って分かってるから』と穏やかに言ったのをよく覚えている。 更には『みんなも喜ぶし似合うなら僕もそっちの方が良い』と肩につくかつかないか程の柔らかい黒髪を指にクルクルと巻き付け、まるで少女のような仕草で悪戯っぽく笑って見せたのが印象的だった。
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