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彼は内面にこそ人を惹きつけるものがあり、本人は否定するが周囲に酷く慕われていた。
否定はするものの『友達がいてくれて嬉しい』と照れくさそうに微笑んだ彼を見て、こんな風景がこの先もずっと続くのだと思っていた。
『昨夜未明、××県××市──黒野さん宅から女性の大声や何かが割れるような騒音が聞こえると近隣の住民から通報があり、駆け付けた警察によりリビングで倒れる黒野 ××さん(14)が発見され病院に救急搬送されました。意識不明の重体で──』
ニュースに見知った名前が映り、放心する。
程なくして友人に見せられた携帯に映っていたのは……ニュースの情報から恐らく深夜だったろうに制服を纏い、薄暗い画面の中、どこか焦点の合わない目をしている黒野くんの顔だった。
『…大丈夫、落ち着いて、僕はユウのお兄ちゃんだから──』
そんな一言から始まる動画をネットで見るまでは、ニュースで黒野くんの重体を知るまでは────
今まで周囲がとってきた行動の全てが、こんな事に繋がるなんてきっと、誰も思っていなかった。
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