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最近では向こうの世界にいた時のようによく笑えていると思うし、それはきっとブレイクさんが毎日通ってくれたおかげだ。
彼は背が高く腕やお腹至る所が筋肉やら脂肪やらで太く、その……強いて言うなら肥えたトラのような人だ。初めは少し怖かったけど、僕よりもずっと大人なのにあまりにも素直で嘘偽りを感じさせない直情的な彼の動きは、どこか信用出来る気がして寂しかったのもあったけど……それを抜きにしてもすぐに心を許していたと思う。
犬面の彼も優しくて、ずっと丁寧に腕の治療を進めてくれている。でもこれだけ良くしてもらっててほとんど傷も治っているのに、出て行けだとか僕になにか見返りを要求する素振りが一切なくて逆に心配になる。
ここは慈善活動の施設なんですか……?そんなものが異世界に…?
少なくとも窓から外を見るに懺悔?とか礼拝?しに来る人も見かけないですし、ブレイクさんや犬面さんを始めとした太眉さんに細い人も神父さんや司祭さんっぽい格好をしてないから教会…ではないみたいなんですけど。
とはいえ、いつまでも面倒を見てもらう訳にも行かない。どちらにせよいつかは一人で生きていかなければならない。
この、僕の知らない世界は初っ端から残酷無慈悲だった────。
ここで生きていくのが過酷なのは痛いくらい知った。それでも優しいここの人達に迷惑をかけるくらいならそちらに行こう。大事にしていても、いつ会えなくなるかなんて分からない。近くにいればいるほどに、そうなった時.......
────こんなにも辛い。
いつ別れが来ても受け入れられるように、精一杯その都度恩返しをしていこうって決めた。
育ててくれたお父さんやお母さん、僕の大事な妹、一緒にいると楽しい友達……恩返し出来なかったみんなの分もこっちで知り合った人たちに返して行けたらいいなって思ってる。
僕だって“いい子ちゃん”、たまにはしてもいいでしょ?
こんなこと言ったらまたみんなは笑うんだろうけど.......。
そこでクスリと笑いが零れる。そんな事でさえ大事で、幸せだったんだって……ここへ来る前の自分に教えてあげたい。
ブレイクさん、犬面のお医者さん。助けてくれてありがとう。
傷だけじゃなくて、ここに来て呆気なく折れそうになってしまった心まで救ってくれて、本当に感謝してます。
まだ暫くはご厄介になりそうですが.......よろしくお願いします。
────僕の心からの感謝が彼らに届くといいな。
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