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no-side────
とある王宮の一室────。
キラキラとした装飾品が至る所に飾り付けられ、ひらひらとした透明感のあるレースは宝石達の魅力を更に引き出していた。
「────は?」
テーブルで紅茶と甘味を楽しんでいた煌びやかな容姿をした少年は素っ頓狂なアルト声を響かせた。
隅々まで豪奢な部屋でくつろぐ彼は紛れもなくこの部屋の主。彼はふらりと立ち上がり、今しがた口を開いた侍従に近寄って甲高い笑い声を上げた。
「……ぷッ、あっははははは!!ちょ、あの黒髪黒目だとか言う子供の話?!…ッふふ、やだほんとに居るわけないじゃない!」
彼はこの国、コーデリアの第二王子アシェル・フォン・コーデリアその人である。
そんな彼の海のように青い瞳には僅かに涙が浮かんでいた。
侍従は困惑の表情で見るがアシェルが気にする素振りを見せることはない。きっと気が済むまで笑いやまない事だろう。
────彼が弾かれたように笑いだしたのには訳があった。
先日、王都から遠く離れたある街の騎士団から城に緊急で報告が入ったが、それは遠征に行った帰りの森でキエトウルフに襲われていた瀕死の黒髪黒目の少年を保護した、というものだった。
だが────そもそも黒髪黒目の人間と言うのはこの世界に存在しない。
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