始まりと終わり

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※初っ端から少し残酷描写入ります。 ──────────────────────── 少年side──── ……変な夢を見た。 崖を転がり落ちる夢だ、嫌な夢だった。 まるで底は無いのではないかと思うほどに終わりの無い闇と苦痛。何も見えないのに明らかに崖を落下しているような感覚で、それが一番しっくりきた。 身体中がまるで本物の生傷があるかのように痛む。 きっと筋肉痛か寝違えたせいで変な夢でも見たのかな。 夢でも無ければ山に行っていないのに突然崖から落ちる事も、その崖がいつまでも終わらないこともありえない。そして例えば終わらない崖を転がり落ちて全身痛いだけで生きているはずがないのだから。夢だ。 特に右腕に激痛が走り痛む体に疑問を抱きながらも目を開ける。 僕は普通だ。平凡で、無力。 特別な力なんて何も無いただの中学生。 誰にともなく言い訳をする。そんなものに意味はなく、慣れたベッドの感触の代わりに────硬い地面に湿った体。 僕は……普通のはず、なのに──── 「ゔ…………ぁ…んで…ッ」 目を開けて目にしたものは、ギザギザと途中で折れたような細い木の幹に右腕が刺さり貫通している様。 それを頭が認めた途端、更に襲った激痛に奥歯が軋みガタガタと音が鳴る。そして直ぐにそんな音も気にならないほどにパニックになって激しく藻掻く。 アドレナリンなどきっと出ていないんじゃないかと思うほどに酷い痛み。痛みに耐えきれず空気を荒く吐き出し暴れてしまえば血が溢れるばかりで、木は根が張っており離してくれる気配がない。 “何故”という言葉が頭を占める。 ────何でこんなことに? 状況に混乱し、激痛を訴える脳ではいくら考えても納得出来る答えが見つからない。 動かないよう必死に耐える。耐えてもどうにもならないだろうと言うのは何となく理解出来るものの、他にどうしろと言うのか。 地面の湿った土を握っては離し、もう一度握る。嫌な汗が手のひらや額にじわりと浮かぶが、今はそれよりも右腕の違和感に吐き気がする。 ガサガサ────草むらの葉が擦れ合う音が徐々に近付いてきて増えた。ザワザワと風が草むらだけでなく背の高い木々の葉も揺らし、泥にまみれた地面や仰向けに倒れた自分の体に、美しい木漏れ日を作りキラキラと揺れている。 やがて草むらの音は一際大きくゆれ、がサリ──という音で止まった。
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