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言葉が何一つ理解できなかったけど、これはくれるということなのだろうと納得することにした。
暫くそのまま歩くが、おばさんに苺を貰った後少し冷静になった頃やっと食糧のこと等なにも考えていなかったことに気がついておばさんにそれはもう感謝した。
────うっかりじゃ済まされないよ、僕のばか。
……だいぶ精神的に焦っていたらしい。
苺って栄養あるみたいだしこれを食べたら暫くは持ってくれないかな。
それにしても見ず知らずのローブを被った怪しい子供にこんなふうに親切にしてくれる人がいるんだと思うと、この世界は怪物?とか野生の動物とかで日本よりもかなり危険で怖い所だと思ったけど、代わりに優しい人達で溢れているのかなと思った。
そう、そのはずだった。
────そう、信じたかったのに……
目の前で石を投げつけられる子供に頭の中がぐちゃぐちゃになった。
ローブを頭から被り膝を着いている少年に何度も何度も繰り返し石が当たる。石を投げる大人や子供の顔を思わず振り返ってみると────そこにあったのは紛れもない嫌悪と拒絶の感情。
そして数人の子供の顔に僅かな喜色をみてギシ──と奥歯が軋むのを感じた。
────どうして、どうしてどうしてどうして、
少しだけど街を歩いてみて、見た目関係なく存在を認めてもらえる世界なんだって思った。
でも違った。結局自分たちにとっての異物をこの世界の人たちは拒絶する。
ただこの世界の普通が違うだけで、差別や虐げはなんの違和感もなく当たり前に存在していた。
寧ろ……あちらよりも余っ程酷い。
この子が何かしたのかと問いただしたい。裏付けはとったのかと話をしたい。もしこの子が何かしてしまったのだとして、こんなに風に大勢で囲んで過剰な罰を受けさせる必要がどこにある?どうして、いつもいつも……
どうしてみんな、誰かを貶めていないと生きられないのだろう。
君は────君は、どうして…抵抗しないの……?
違う心の底ではわかってる。出来ないんだって、そんなこと僕はよく知っているじゃないか……
石を投げつけられた子供のフードが少しズレ、ちらりと覗いたそこには白い頬を伝う赤。ボタボタと地面にシミを作る血が痛々しい。
「~~~~~~~っ、(なんでなんでなんでなんでっ)」
もう無理だった。とても見ていられなかった。
大人や子供関係なく石を投げつけられる少年の元へ走って抱きしめ、投げつけられる石から庇った。
偽善でも同情でもなんでもいい。そんなことはどうでもいい。今、この時、助けないでいつ助ければいい。
このまま正気を失った多くの人間からの暴力が続けば、彼は死んでしまうかもしれない。
……もし彼の未来に、今後誰かに助けてもらえて幸せになれる可能性があったとしたら?
そう思うと見て見ぬ振りなんてできなかった。
僕みたいに考えてくれる人が何度でも助けることが……理想だ。自分にできる範囲で助けもし相手が気負うなら、変わりに今度はいつか自分を助けてくれと言えばいい。僕は子供だ。それを免罪符にしたい訳では無いが、言い訳くらいにはさせて欲しい。今の僕にはそれしか出来ない……傍観も、いやだ。
だから、今は、これでいい。
虐めを受けてる人や避けられてる人を見て、その場限りでも優しくするのが偽善だと尻込みして、何もせず傍観することを選ぶ自分より……本人に責められてもいいと、傍観者から抜け出す自分の方が、僕はよっぽど好きだから。
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