差別と虐げ

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どこか冷静に考える頭とは裏腹に────。 必死に訴える僕の声は何かに掻き消され大した音にすらならず苛立つが、それでも怒りが伝わればいいと全身で必死に伝え続ける。 とっくに石の雨は止んでいた。でも罵声はやまない。まだ子供のこの子にとって大人は守ってくれるはずの存在だったのにそんな彼らが周りの子供と一緒になって拒絶する。どれだけこの子にとって救いが無いだろう。 それはこの子供にとって助けを求める先を見失うには充分だ。“あの子”みたいに大人を信用出来なくなって欲しくない……。 この子にとっても、僕にとっても……大きな彼らを物理的にも精神的にもどうにかする術はなく、どんなに叫んでも僕の声が届くことは無い。 ────声が出たとして、僕では彼らに分かる言葉が紡げない。 このどうしようもなく役立たずな自分と、あまりにままならない状況に涙が出てくる。 石の雨が止み、少年を抱きしめていた腕を弛めて少し離れる。彼は泣いていなかった。 ……どうして一番辛い筈のこの子より先に自分が泣いてしまうのだろう。 この子がこれ程の扱いを受けて泣かないのは普段からそうだからなんじゃないのか、という憶測の域でしかない杞憂に悲しみで胸が苦しくなって、それと同時に煮えたぎるような怒りを感じた。 だから…… 僕の元々弱っていた心は──── 知れず、握り締めていた手に力が籠る。 ────簡単に悲鳴をあげた。
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