カルクの当たり前と奇跡

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「まさかあの窓から飛び降りてでるなん───」 「あの、ブレイクさん」 「ん……なんだ?」 「その…僕、兄と街におりたんですが途中ではぐれまして」 僕がブレイクさんに思い出したことを言うと彼は首を傾げた。背が高い彼を見上げて話すと首が痛いな、と思ったのは内緒だ。 背が高いのは醜いとされているから失礼だろう…いや僕の方がそれ以外はよっぽど醜いから彼からしたら同情すらされたくもないんだろうけど。 「はぐれた?」 「あ、はい。……さっきの状況を思い出してもらえれば」 「あぁ……なるほど、またアイツらか」 「まぁ、そういう事になります」 ブレイクさんは納得したように眉を顰めると、豊かな瞼に覆われた髪と同じ暗い金色の瞳をキラキラと木漏れ日で輝かせた。 第二とはいえ騎士見習いになるにはそれなりに実力が必要で、僕や兄さんはそれを持ってる。 見た目はともかく騎士見習いになる最低年齢は10歳だけど実際なれる人間は極僅か。そんな中僕は最年少の10、兄は一つ上で11。 つまり自分より容姿が悪い(劣っている)僕たちの方が優秀だと言われているようなもので、面白くないと思う連中が多いということだ。 身寄りがなくなって路地裏で人生を終えそうだったところを最年少騎士見習いとして生きている。 そんな奴を虐げればさぞ愉悦に浸れるのだろう。腐った性根をしている。 「おじさんのところに行く予定だったんです。心配していると悪いんで僕が宿舎に先に帰っていると伝えてもらえると助かるんですけど…」 「あぁ、それならこの後ノアが薬届けに行くから、ついでに言伝を頼んでやる」 「お願いします」 兄さん僕のこと探してたかな……。 いや、兄さんの事だし僕が急に居なくなったんだっておじさんにワーワー言ってる頃かもしれない。 兄さん……ちょっと頭が悪いから。
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