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何度か曲がり角を曲がったりしていると、カルクくんが途中別の部屋に寄った。カルクくんは1人で入っていったので、外で待っていると彼はカーディガンを持ってきてくれたらしく、僕に羽織らせてくれた。
身体が冷えるのを気にしてくれたり手はエスコートされるみたいに引かれたりと……なにやら至れり尽くせりな状態だ。
自分は今どこへ向かっているんだろうか、などと思うものの、外だといいなぁなんて、カルクくんに呼びかけ────コホン、肩を、つつき。……窓の外を指さして首を傾げてみたりした。
彼は頷いてくれてそのまま、また歩みを進め外へ案内してくれる。
やっぱり……外に出られるのは純粋に嬉しい。
街だって差別を目にしなければとても楽しかったし、親切な人だっていた。出店を冷やかして居るとちょこちょこ何かを貰えることもあって、ああいうことをする人だけでなくやっぱり優しい人も多いんだと、冷静になった今になってやっと思い出せた。
だからだろうか、あんなことがあってもあの街は怖くないし嫌いにもなれない。
カルクくんに手を引かれて建物の外へ出た。
陽の光に照らされた亜麻色の髪はキラキラと透けており、肌も綺麗なアイボリーだ。カルクくんは赤茶の瞳をしていたけど、それ以外は色素が薄いのかな?
外へ出ると目の前にはここを抜け出した時に見た大きな運動場のような空間。今はラフな格好をした男たちが何ヶ所かで固まり、剣を一定の感覚でひたすらに奮ったり、2人1組で打ち合いをしたりなど各々で鍛え合っていた。
僕は漸く、ここが凡そなんの施設なのかを理解した。
……結論からいえば多分ここはこの街を守る騎士たちの宿舎、もしくは職場……じゃないかと思う。だから先程からすれ違った剣を帯刀していた彼らは騎士。目の前で繰り広げられる明らかに訓練らしき様子で今までの細々とした違和感にも合点がいった。
魔物に襲われていた僕を助け、その後も当たり前のように面倒を見てくれていた意味がわかった。騎士と言うとあちらの世界で言う警察官のイメージ。彼らは治安を守り、弱きを助ける立派な人達だったのだ。そりゃあ保護若しくは監視してた子供が脱走したら血眼で探すよね。
運動場を訓練の邪魔にならないよう少し離れたところから一周しながら眺め、軈て元の位置に戻ってきた。
引き続きカルクくんに促されてついて行くとさっき僕らのでてきた宿舎の入口とは少し離れたところにベンチがあり、そこに座るよう勧められた。
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