色に出に蹴り我恋は

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ドレッドヘアの男子が、水着を着てキスをねだるグラビアアイドルのページを大雅の目の前に差し出した。 そこにいる全員が大雅に注目している。 「いや、ちゅーとか、キモいだろ。口と口をくっつけるんだろ?俺、絶対無理」 「この潔癖野郎が…」 雑誌を地面に叩きつける男子、苦虫を噛み潰したような表情の皆を意に介しもせず、大雅は無邪気に聞いた。 「イバタは?」 女子二人が盛大にため息をついた。 「あ、あれイバタじゃね?」 黒髪ピンパーマの男子が、遠方から此方に向かって歩いてくる人影を見て言った。 大雅は顔を上げて凝視する。 金髪のツンツンヘアに黒マスク。 白いシャツの腕を捲り、ギンガムチェックの短いスカートから伸びる長い脚には編み上げブーツ。 手にドリンクのカップを持って飲みながら歩いてくる。 「イバタ!」 大雅が一直線に駆けていく。 その姿を見送る面々。 「なんだあれ。ワンコか」 「ケツにしっぽ見えたわ。めっちゃ振ってる」 「自覚ないのも大概にして欲しいよね」 「イバタがかわいそうだよ」 ウェーブロング女子の呟きに、全員が頷いた。
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