色に出に蹴り我恋は

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柚月には黒歴史がある。 中高時代、地元ではまあまあ名の知れたヤンキーグループに所属していた事である。 ヤンキーといっても守らないのは校則と門限くらいで、派手な格好をしてただひたすら馬鹿をやっていただけだった。田舎町だったので他校との縄張り争いが娯楽のようなものだった。 総勢10人ほどのグループには柚月を含めて女子が3人いたが、柚月以外はどちらかと言うとビジュアル担当、空手の心得があった柚月は女だてらに喧嘩に加勢する唯一の女子だった。 もう、7年も前のことだ。 「薬丸ぅ、西支店から異動になった面子見た?」 同僚の上田の問い掛けに柚月は書類を睨みながら首を振った。 「なんかさぁ、結構なイケメン揃いらしいのよ」 柚月は興味なさそうに電卓を叩きながら口を挟んだ。 「自社内アイドルグループでも作るつもりなのかね」 今度は向かいの席から主任の八島が小声で囁いた。 「社長の娘の婿候補に呼び寄せたって話もあるぞ。本社では、すでに何人か有望なのが選出済みだとか」 「何それ、おもしろ!ねえ、ねえ、誰が選ばれるか予想しようよ」
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