色に出に蹴り我恋は

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「うめえ」 大雅は、串にかぶりついた後、何度も頷いた。 「焼き鳥なんて色気ねぇとこ連れて来やがって、と思ったけど、こりゃうめぇわ」 「あの頃、よく河川敷で焼き鳥焼いて食ってたよね」 「あー、やってたな。期限切れの冷凍焼き鳥をコータが大量に持ってきて…あいつ、今、家のスーパー継いで専務やってるんだぜ」 「まじで?!あんなに嫌がってたのに」 「それがさ、アイツの発案で、業務用スーパーに改装してから結構儲かってるらしいんだよな」 大雅はメンバーと頻繁に連絡を取り合っているようだ。同級生や仲間の近況を聞くのは楽しかった。 あれから柚月も色々な出会いがあったが、あの頃のように気心を知れた付き合いまでには至らなかった。年月を経てその事を改めて思い知り、自分から関係を絶ったことを少し後悔した。 「久しぶりに会いたいなぁ」 大雅は、柚月の思わず漏らした言葉に反応した。 「じゃ、会いに行こうぜ。来月の連休、俺が車を出すからよ。電車賃浮くだろ」 「ええ…」 交通費はともかく、片道6~7時間はかかる道のりを大雅と二人きりはさすがに気まずい。 「俺んちに泊まってゆっくりしていけよ。帰りも送るし。そうと決まれば、お袋に連絡しとくわ。お前に久しぶりに会えるっつってお袋も喜ぶわ」 「えっ、ちょっと待ってよ。何勝手に決めてんの?」 「お前の連絡先も教えろ。スマホ出せ」 「ちょっ…」
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