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「早く出せ」
何故か凄まれて、柚月はすごすごとスマホを取り出した。
連絡先を交換してスマホを鞄に仕舞おうとした時、着信音が鳴った。
柚月は画面を見て、店の外に向かった。
「え?今家にいるの?…わかった。あと30分で帰る。ご飯は?ハイハイ」
通話を切って、店に戻ろうと振り返ると、大雅が腕を組んで立っていた。
「わっ、なに?」
柚月は驚いて声を上げた。
「…帰るのか?」
柚月は空になっている席が心配で大雅を店の中に押し込みながら、説明した。
「うん。ごめん、帰らなきゃならなくなった。大雅は残りなよ、飲み足りないでしょ」
「いや、じゃあ、送ってくわ」
「いいよ。まだ時間も早いし」
大雅は柚月の言葉を無視して、伝票をつかんでレジに向かった。
戻ってきた大雅は柚月の腕を掴み、店を出て歩き出した。
「お前んち、遠いの?タクシー止める?」
柚月は諦めて従う。
「車で15分位かな。ここから西の方角だけど大雅んちは?会社の近くなんじゃないの、逆方向だよ」
「そんな気を遣わなくていーんだよ。送らせろ」
大雅は手を上げて空車が表示されたタクシーを止めた。
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