色に出に蹴り我恋は

18/72

396人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
柚月は温かいものが込み上げて、それを噛み締めながらお風呂を沸かすために立ち上がった。 「本当に良いの?お義父さんに迎えに来てもらっても良いんだよ?」 知也の自宅を経由してタクシーで帰ると言い出した大雅の前にコーヒーを置いた。 知也は今、入浴中だ。 部屋には大雅とふたりきり、どことなく落ち着かない。 「良いんだよ。俺がそうしたいんだから。可愛い弟じゃねぇか」 「まあね」 柚月は自分用にいれたコーヒーのマグカップを両手でもって口に運んだ。 テーブルの向こう側から手が伸びてきて、柚月の髪を一房掴んだ。 柚月は目を上げて、大雅を見た。 「これ、染めてんの?」 「まあね。就職対策だったんだけど、何となく継続してるね」 父方に北欧の血が混じっているらしく、父はクォーターだと聞いていた。つまり、柚月は八分の一。髪や目の色素が薄く肌の色も白い。子供の頃はからかわれることが多かった。…負けちゃいなかったけども。 浮気ばかり繰り返し家にろくに帰ってこない父親と良く似た外見が嫌で、そのうちに髪を脱色してマスクを装着するようになった。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

396人が本棚に入れています
本棚に追加