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父親が下品と嫌うゴシックパンクファッションを敢えて身に纏い、反抗していた。
「ピアスは?」
大雅の指が耳朶に触れて、柚月は身じろいだ。
「ちょっ、」
「ここ、俺が開けてやったよな」
指が耳朶をなぞり、背中をゾクゾクしたものが走った。柚月は、思わず大雅の手首を掴んで離す。
「そういえば、大雅のも私が開けたよね」
大雅は髪をかきあげて耳をこちらに向けた。
「おう、これ、お前にもらったやつ」
左耳朶に2つある内の1つのシルバーのスタッドピアスを見て、柚月はなんとも言えない気持ちになった。
大雅に何気ない風を装って渡したそれは、実はペアピアスで、片方は柚月が持っている。
お揃いのものが欲しくて使わないからと偽って押し付けたのだ。
(それをまだ使ってくれているんだ…)
あの頃の甘酸っぱい想いが込み上げて、視線を反らして俯いた。
「物持ち良いね」
「これは特別。お前からもらった物だから」
柚月はその言葉の意味を測りかねた。
「安物だよ。もっと良いのも買えるでしょ?出世間違い無しの有望株だって聞いてるし」
「そんなでもねぇよ」
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