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周囲の盛り上がりにいまいち乗り切れない柚月は、先ほど見ていた書類に付箋を付けてクリアファイルに入れると、立ち上がった。
「ちょっと、営業部に行ってきます」
と、歩きだしたところで扉が開き、見慣れない三人の若手男性社員が現れる。
事務所内が静かにざわめいた。
(これが噂の婿候補達!)
柚月は目を細めた。
成る程、遠目に見てもそのイケメンぶりが窺える。
皆、背が高くスマートで、髪もバッチリセットされている。
長いこと恋愛から遠ざかり、乾燥気味の生活を送る柚月には眩し過ぎる。
「こちらで名刺を受け取れると聞いたのですが…」
柚月は周りをそっと見回した。
カウンターの一番近くにいて、しかも唯一立っている自分が対応しなければ不自然だろう。
柚月は諦めてカウンターに近づいて顔をあげた。
とたん、凍りつく。
カウンターに並んだ三人の内の1人が、明らかに知った男の顔だった。
…嘘でしょ。
柚月は咄嗟に俯き、どぎまぎしながら備え付けの用紙をカウンターに置いた。
「こちらに名前をお書きください」
記入された名前の中のひとつに確かに奴のものがある。
柚月は必死で平静を装い、お待ちくださいと告げて備品室へと逃げた。
(まさか、こんなところで奴に会うとは!)
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