色に出に蹴り我恋は

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「総務の薬丸さん?」 ふいに自分の名前が耳に入ってきて、柚月は曲がり角の手前で立ち止まった。 「最近、十七夜君が妙に親しくしてるって噂を聞いてさ」 角からそっと顔を出すと、観葉植物越しに休憩スペースで話す男性社員の姿が見えた。野崎と磯貝、あと1人は柚月と同期の山口、皆営業部だ。 「十七夜君って、度胸も人望もあるし、格好良いし…西支店でもかなりモテてたんじゃない?」 「ああ、まあ。そうですね」 磯貝が答えている。 「それが敢えて、あんな地味な子を狙わなくても良さそうなもんだけどね」 野崎だ。 「そうかなぁ、薬丸さんって綺麗じゃないですか?スタイルも良いし、仕事もてきぱきしてるし…」 磯貝君、良い子だ。 「いやいや、そうでもないよ。堅くて融通きかないし」 「つーか、昔の知り合いだって話をききましたよ」 山口、その話はどこから聞いた。 「じゃあ、あれだ。寂しいから手近なとこで済まそうとしてるんだな」 野崎…どこまでも失礼な奴だ。 「それにしたって、あんな可愛げがない子のどこが良いんだか」 「いや、付き合ってる訳じゃないでしょ、親しくしてるだけかも。ねえ、山口さん」 磯貝が、口さがない野崎を見かねて山口に助けを求めている。 「薬丸…あいつ、恐くないですか?妙に迫力がある時が…」 ほほう、山口は侮れないな。
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