色に出に蹴り我恋は

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大雅と柚月を交互に見ながら、おずおずと訊ねられた。柚月は肩に掛けられた手をどかす。 「違います。けど、約束してるのは本当なので、すみませんが…」 爽やか青年は名残惜しそうに立ち去る。 背後に立つ男は再度柚月の肩に手を置く。 「ということで、週末は俺と飯食う、決定な」 柚月は素直に返事しかねた。 先日野崎が言っていた言葉が少し胸に引っ掛かっていたからだ。 あの時は全く気にならなかったのに、数日を経てじわじわと柚月の胸に侵食してきた、あの… 「それにしてもよ、何で突然イメチェンしたのお前」 大雅の責めるような口調にムッとして言い返した。 「別に理由はないわよ。飽きただけ。大雅に関係ないでしょ」 直後、肩に回した手に力が入ったのがわかった。 柚月がヤバイと思った瞬間、引っ張られ、人の滅多に来ない資料室前の引き込み廊下に連れ込まれた。 「なに?!」 きっとなって睨み付ける柚月を壁に押し付け、両腕で囲いこんだ大雅は上から見下ろしてきた。 …既視感だわ。やり方が昔から変わらない。 「いい加減にしなよ、ほんっと、変わってないね。今度は何を脅すつもり?」 「脅してねぇ。壁ドンだ」
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