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柚月は静止した。
「…ふざけてんの?それに、壁ドンする男はそんな物騒な目で睨まないよ!」
「ああ?」
「そんなしゃくれないしね!」
「お前やられたことあんの?」
「無いけど。ねえ、退きなよ。なんなのこの扱い。ご飯くらいいつでも付き合うけど、そんなに寂しいなら彼女でも作れば良いじゃん。モテてるんだし。手近で済まそうとしなくてもさ」
柚月は大雅の胸を押して抜け出した。
手近で済ませる、という野崎の言葉が的を得ているようで、ずっとモヤモヤしていた。
いつまでも柚月は大雅にとって身近な女友達なのだ。ぞんざいに扱える頑丈な存在から抜け出せない。
大雅への想いを断ち切れず、揺れている柚月の心情なんて想像もつかないに違いない。
「手近ってなんだよ。俺がそんな理由でお前に構ってると思ってんのか?」
背後から掛けられた声にも振り向かず、柚月は広い廊下に向かう。
しかし、あと数歩のところで腰を掴まれて引き戻された。抗議しようと振り向いたところ、抱き込まれていきなり唇を奪われた。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
目の前の長い睫毛と間近に香る大雅の香り。
柚月は漸く現状を把握した。
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