405人が本棚に入れています
本棚に追加
腰と後頭部をがっちり押さえられ、押し付けられた唇。
柚月の熱が上がっていく。
抵抗しようと身体を捻ったが、拘束した手が更にきつくなっただけだった。
唇が離された瞬間、抗議しようと開いた柚月の唇は、直ぐにまた違う角度から塞がれた。そのまま捻るようにねっとりと唇を食まれ、柚月は膝の力が抜けそうになる。しかし、熱く滑った舌を口内に差し込まれた瞬間、渾身の力を振り絞って目の前の身体を突き飛ばした。
狭い廊下で大雅は背中を壁に打ち付け、そのまま壁に凭れて此方を見ている。
見たこともない熱に煙る目。
濡れた唇を親指で拭い、舌で舐めとっている。
柚月はその圧倒的な色気に思わず後退る。
「わかったかよ」
柚月はじりじりと壁を伝いながら、混乱する頭で考える。
どういうこと?
自然と柚月の目に涙が滲んできた。
口から出たのは怒りに震える声だった。
「ばっかにすんのも大概にしろよ。そういう相手なら他を当たりな」
「は?」
「私なら逆らわないとでも思ってんの?都合の良い扱いなんてうんざりなんだよ」
柚月は手が壁の角に触れた途端に走って逃げた。
大雅は追ってこなかった。
最初のコメントを投稿しよう!