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野崎から回ってくる書類を確認しながら、柚月は感心していた。驚くほど正確になった。訂正は殆ど無い。
「あからさまだね。まあ、その分、野崎以外からのアプローチが増えてるけどね。薬丸が美人なのは薄々気付いてたけど、これ程とは…。学生の頃とかモテたでしょ?」
柚月は首を振った。
「全然。怖れられてはいたけどね」
なんたって黒マスクの堕天使だからね。
しかし、野崎の書類の最終ページに差し掛かったところで、1つ不備が見付かった。
野崎本人の押印がない。
柚月は内線で野崎のデスクに繋ぐ。
「総務部の薬丸です。本日提出していただいた116号機試運転の申請書に、野崎さんの印鑑が押されていないのですが」
「あ、すみません。あの、俺これから社内で打合せがあるので…一時間後に第三会議室に来てもらって良いですか?」
妙に礼儀正しくて気持ち悪い。
「わかりました。それでは16時半ごろ参ります」
「お前が来いよって話でしょ」
電話の応対を聞いていた上田が呆れて言う。しかし、しょっちゅう呼びつけられるよりマシになった。そこは評価するべきだろう。理由はなんにせよ、時間のロスは減ったのだから。
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