本編

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「ああ…ごめん。曲がっちゃった」 項垂れて書類をみつめている。 「ああ、これくらいなら大丈夫ですよ。社内文書だし」 柚月は書類を覗き込んだ。 すると、野崎がおおげさに仰け反った。 「どうしました?野崎さん。様子がおかしいですよ、やっぱり医務室に…」 柚月の言葉を遮るように野崎が裏返った声を上げた。 「いいんだ!違うんだ、これは、緊張してるだけで」 もしかして、柚月を怖がっているのか? 先日の件で? それとも元ヤンがばれたとか…まさかな。 「ごめん、実はわざとなんだ。押印を忘れたの…薬丸さんを呼び出すための」 まさか…復讐?いや、されるようなことしてないよな。 「気付いてたよね、ずっと、わざと書類を間違えて薬丸さんと話す機会を作っていたこと」 「へぇ、そうだったんですか」 「えっ?気付いてなかったの?」 自分が少々鈍いことは自覚しているが、流石にこの流れの行先は予想がついた。 「ずっと、薬丸さんの事が気になっていて…」 「からかわれているだけかと思ってましたが…」 野崎は真っ赤に染まった顔を上げて、大声で言った。
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