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自分がこの世から消えて無くなってもなにも変わらない。誰の特別でも無い自分などいらないのだ。
ピアスの数を増やしてもスカートの丈を短くしても、満たされない。
それでも、一番じゃなくても、身近で感じる仲間の笑い声と胸を締め付けるほど眩しい大雅の存在だけが、柚月を繋ぎ止めていた。
裏切られたとか傷付いたとか、柚月の一方的な恨みのようなものなのだ。
大雅は何もしていない。
今も昔も柚月の目と心を捕らえ、ともすればすぐ惰性のように生きてしまう柚月に、喜怒哀楽を与え、いとも簡単にとりまく世界の色を変えてしまうのだ。
柚月は上からその愛しい姿を見つめた。
あの熱い包容と激しい口付けを思い出す。
例え情欲だけだったとしても、あの瞳は柚月が渇望していたものだった。
柚月は知らず、唇をなぞっていた。
その姿を下からじっと見つめている男がいたことには、まるで気付かずに。
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