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“無理。死ぬ。”
覗き込んだ知也が呟いた。
「甘えてんね…やっぱ子供みたい」
「はは、ほんとだね。でも、放っとけないや。やっぱり」
知也は笑顔で頷いた。
「行ってきなよ。帰る時はちゃんと戸締まりしとくから」
「じゃあ、俺の車で送るわ」
柚月はタオルや冷却シートなど思い付く限りのものをトートバッグに入れた。
知也が玄関まで見送りに来てくれる。
「少年、お邪魔したな。姉ちゃん借りてくぞ」
「どうぞ。どうせなら泊まってくれば?」
柚月はぎょっとして知也を見た。
デコッチは豪快に笑う。
「少年、くれぐれもこいつらみたいになるなよ。素直な気持ちを誤魔化さねぇで、伝えるべきことを躊躇しないようにしろ」
知也は頷いた。
「心得ました」
デコッチの車はまさかの軽トラだった。荷台に積まれた工具が、振動でカタカタ鳴っている。
「小さな工務店なんだけどさ、親方がその道では有名な職人だったらしくて、弟子の1人である俺がこうやって県外に派遣されるわけ」
「デコッチ、手先が器用だったもんね。天職かもなぁ」
デコッチは照れくさそうに笑い、デカイ身体を屈めながらハンドルを握っている。
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