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大雅の住むアパートは築10年といったところだろうか、小さな商店街の外れの住宅地の中にあった。外壁が焦げ茶の木調で照明もレトロでなかなかお洒落な外観だ。
隣接した公園の緑が生い茂り、アパートの壁に覆い被さっている。
柚月は優しい明かりが照らす階段を上り、少し薄暗い廊下を歩く。そして、手書きの表札が掲げられた部屋の前に立った。
相変わらず汚い字だな。
チャイムを押してみる。
物音ひとつしない。
(そういえば連絡もなく来てしまった。寝てたらどうしよう…電話してみるか)
スマホを取り出そうとしたところで、部屋の中から派手な物音が聞こえた。
ガタッ、ガラガラ、ガチャン、
あーっくっそう!
大雅の声だ。何してるんだろう。
それからドタドタと足音が近づいてきて、扉が開いた。
「デコッチ、てめえ、どこ行ってた…」
ボサボサの頭にグレーのスエットの上下を着た大雅が、柚月を見て固まった。
「えっ!?何でお前、来たの…」
柚月は半開きの扉を開くと身体を入れ、部屋に上がりこんだ。
「死ぬっていうから来てやったんだよ。体調は?ご飯食べた?」
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