色に出に蹴り我恋は

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いつの間にか近くに来ていた大雅が、ポケットから可愛らしい包みを取り出して女子二人に投げた。 「何これ」 「クッキーだって。貰った。手作りもんは食べれねぇ、つったんだけど、皆で食べてくれってゆーから受け取ってきた」 「で?当然、断ったんだよね」 大雅は頷いた。 「可愛かった?」 「?わからねぇ」 わからねぇ、って何だよ。 女子二人はうんざりした顔で、モデルのように見目が良い残念な男子を見た。 雑誌に群がっていた男子の一人が、大雅に気付いて手招きした。 「タイちゃん、見てこれ、この娘どう思う?めっちゃ、可愛くね?」 別の金髪男子が呟いた。 「馬鹿かおめぇ、大雅に聞いたってしょうがねぇだろ。どうせ、こいつなんか…」 大雅は雑誌を覗き込む。 薄い白ワンピースを着てはにかんだ表情で微笑む人気急上昇中のアイドルグループの… 「あ?そうかぁ?イバタの方が可愛いだろ?」 「……」 例によって周りの面々は沈黙する。 「イバタはともかくよ、お前さあ、ほら、こーゆーの見てムラムラしねぇの?ちゅーしたいとかよ!」
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