398人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
柚月は覚悟を決めて席を立った。
「現地で説明します。十七夜さん、お時間ありますか?」
大雅は、はい、お願いします、と答えた後、口の端を上げてニヤリと笑った。
柚月はそれを目にしてしまい、絶望的な気分になる。
会議室に向かう廊下で大雅は後ろから話かけてきた。
「お忙しい薬丸さんに、お手数をかけてしまってすみません」
「仕事ですので」
「先日から、ずっとお話する機会をうかがっていたんですが、なかなか隙が無くて」
避けまくってましたからね。
「私は話すことなんて無いんですが」
会議室に着き、柚月はカードキーを取り出して解錠すると扉を開けて大雅を促した。
扉は開けたままにしておくつもりだった。
しかし、大雅は柚月の腕を掴んで部屋に引っ張りこむと、扉を閉めて内鍵を閉めた。
「何を…」
最後まで言い終わる間もなく、柚月は両手を頭上で拘束されて壁に押し付けられた。
「こうでもしなきゃ、逃げんだろーが」
至近距離で見つめてくる、その目が物騒な光を放っている。
「…十七夜さん、離して下さい。傷害罪ですよ」
「ああ?その他人行儀な口のきき方が気に入らねぇんだよ。塞ぐぞコラ」
最初のコメントを投稿しよう!