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母親
今日から私は女に戻る。
そう決意し、薄暗い部屋の中で彼に抱かれた。
「キレイだよ」
「好きだよ」
「愛してる」
彼が愛情を与えるたび、私は何歳も若くなる。
まるで、魔法のように。
「ねぇ、俺と一緒になろう」
上着を羽織った私の背中をぎゅっと抱き締め、耳元で囁く彼。
そんな彼の腕を払い、部屋の戸を開けた。
廊下の明かりが荒れてひび割れた手を照らす。
あぁ、また戻ることができなかった。
罪悪感に押し潰された何かを抱えながら歩き始めた。
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