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今日からわたし、
そのあと携帯のアドレスを交換し合ってから、改札の方へ立ち去る彼の背中を見送った。いつものように友だちと楽しそうに歩くその背中が最後にこっちを向いてわたしに手を振る。嬉くて、だけど照れくさくて、わたしは顔を真っ赤にしながら小さく手を振り返した。
それからすぐに姿が見えなくなると、膨らむ寂しさを隠すように、今度は携帯をじっと見つめた。
『高原修哉』
自分の携帯に彼の名前がある。たったそれだけのことが、寂しいと思った気持ちを吹き飛ばしてくれた。
嘘みたい。今日からわたし、あの人の彼女なんだって。嬉しい、嬉しい。
電車に乗ると、窓ガラスに映る自分を見つめた。分厚い眼鏡、ひとつに結んだだけの野暮ったい髪型、メイクもなにもしていない地味な顔。それがわたしだった。
だけど、それでも。
変わりたい。そう思った。
可愛くなりたい。あの人のために。こんな自分のままじゃ、彼にはまだまだ釣り合わない。
変わらなきゃ。強く思ったわたしは唇をきゅっと噛み締めると、家のひとつ手前の駅で電車を降りた。
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