シャンプーと色付きリップ

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シャンプーと色付きリップ

 家に帰っていつも通りごはんを食べ、部屋に入る。いつもならこのままお風呂に向かうところだけど、今日はその前に鞄からビニール袋を取り出した。さっきのドラッグストアで買ったシャンプー。いつもはお母さんが買ってきたものを適当に使っているだけだけれど、いい香りと可愛いパッケージに手が伸びた。髪に手を添えているモデルのようにサラサラの髪になれるかな、あの人はこの香りに気付くかなと期待して。  そしてピンクの色付きのリップクリーム。口紅にはまだ手が届かなかったけれど、ちょっとだけ背伸びして、これくらいならいいよね。  ドキドキしながら、ピンクのスティックをくり出して唇に近付ける。しっとりとした感触のあとで鏡を覗くと、ふっくら色付いた唇でこっちを見ているわたしがいた。    かわいい……かな? どうだろう、似合ってるのかな。    どうなのかは分からないけれど、ほんの少しだけ、唇の端が持ち上がる。何だか不思議。自分に自信が持てる気がした。  大丈夫、わたしは変われる。今日からわたし、変わってみせる。
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