磨く

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 その日からわたしは必死に自分を磨いた。ファッション雑誌やインターネットでメイクやスキンケアを学んだ。毎晩、誰かがメイクをしていく動画を見て自分も真似した。休みの日にはドラッグストアや美容院に行き、思い切って色んな事を尋ねた。メイクの仕方や自分に似合う色の選び方、可愛いヘアスタイルのやり方なんかを。最初のうちは分不相応な気がして上手く尋ねられなかったけれど、少しずつ分かることが増え、できることが増えていくと、自分に自信が持てるようになり、今度は新しいことを知るのが楽しくなっていった。    学校に行くときには今まで通りに校則を守った格好をしていたけれど、休みの日や新しく始めた本屋でのアルバイトのときには色んなメイクや髪型に挑戦した。そうしていると、周りの人に『今日の髪型、似合ってる』とか『メイクかわいいね』と言ってもらえることもあった。  それが嬉しくて励みになって、ますます新しいことを知り、挑戦していった。    だけど全部はあの人のため。修哉さんに可愛いって思ってもらうためだけに頑張っていた。
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