異世界で臨時診療所を引き継ぎました ~でも、専門外の診療ばかりで、自慢の腕を振るうことが出来ません~

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 ヘルプスト村は、猫人族の住むケツェルミューレ公爵領の中でも一番大きな村で、中央に木造の教会がある。  この教会に隣接した、広さが約15平方メートルの空き家の前に、一週間に一回、ヘルプスト村や周辺の村から、病気に罹った農民や怪我をした農民が列を成す。  なぜなら、普段は空き家の小屋が、一日だけの診療所に変わるからだ。  しかも、この診療所の医師は、異世界からの出張者。  医師は、猫に顔が近い猫人族に警戒されないよう、猫耳の付いた白帽子がくっついた白い覆面を被り、白衣を着用し、白い手袋をつけて診療する。  それだけで十分怪しい格好であるが、農民は医師が神の使いであって、真の姿を見せないのだと解釈している。実は、最初にそう説明したのは、教会の司祭なのであるが。  この診療所には、その日だけ集まってくる妖精の助手が四人いる。皆、蝶々に似た四枚の虹色の羽が生えた人型の妖精である。  そのうち、二人は身長が8センチ、茶髪碧眼で痩せ型の少年。作務衣に似た茶色の服を着ていて、双子と思えるほど、顔が似ている。主に運搬と片付け係。  もう一人は、身長が15センチで、知的な雰囲気を漂わせる風貌の緑髪緑眼の少年。服装は、シャツもズボンも緑色でセンスがないが、診察の能力が高い。  残りの一人は、同じ身長で、銀髪灼眼の少女。白いドレスが高貴な印象を与えるが、きつめの言葉と粗暴な態度が残念。こちらは、治癒力が高い。
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