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「何、この人。全然、駄目じゃない?」
「まあまあ。今回は患者がもの凄く多くて、しかもこの人、今日が初めての診察だから――」
「理由にならない。私たちがいないと、何も出来ないじゃない? 誰が連れて来たの?」
「知っているくせに。そろそろ現れる頃だけど」
覆面を被ったマキが、宙に浮いて腕組みをしながら言い争う二人の妖精を見上げて嘆息すると、小屋の扉が軋みながら開いて、白い祭服を纏った灰色の毛並みの人物が現れた。白い帽子を脱げば、服を着せられた猫が二足歩行しているように見えるが、立派な司祭である。
「どうですかな、マキさん? 初日の感想は?」
「動物病院で猫を診察している気分です」
再度嘆息するマキは、両腕を広げて肩を竦める。
「ほっほっほ。どうぶつ病院の意味は分かりませんが、確かに、人間からすると二本足で歩く猫を診察しているにしか見えないでしょう。でも――」
にこやかに笑う司祭は、少し真顔になった。
「我々からすると、変な形の耳を目の横に付けて、全身からほとんど毛が抜けた人間の方が不気味なのですよ。そこの妖精が巨大化したかのように見えて」
「なら、なぜ、猫ではない私を異世界から召還したのですか?」
妖精を指差す司祭は、その指を天に向けた。
「神のお導きです」
「――――」
「と、周りには説明していますが、実は昔、人間の医者がこの小屋に現れて、疫病から人々を救ったのです」
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