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由美は、店員から受け取ったジョッキを半眼で見つめ、「ビールの泡が多い」とこぼし、親指と人差し指とで泡の高さを測る。
「で、自己主張強い相手に、マキはどうするの?」
「強くは言えない」
「――もしかして、畑違いだから?」
由美がジョッキから唇を離すと、鼻の下に泡が付着しているのを見たマキは、笑いをこらえた。
「マキんとこの言う奴の方が詳しいとか?」
「……うん」
「じゃ、仕方ないな」
枝豆をつまむ由美に倣って、マキも皿に手を伸ばす。
「相手って、そこの現場、長いの?」
「五年やっている」
「主か。そいつ、医者だよね?」
「うーん。助手みたいなもの」
お手拭きをつまむようにして指を拭く由美が、目を丸くする。
「助手!? 偉そうに、って言ってやんなよ」
――簡単に言うけど、異世界人が相手じゃ……。
苦笑いするマキは、冷や奴の皿に目を落とした。
★★★
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