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置物は、花弁の一枚一枚が、今にもほころびそうな程、生き生きと彫られており、花香が漂って来そうだった。
水面に浮かんでいてもおかしくない見事な出来栄えに、翠蓮は息を飲む。
翡翠は、彼女を守護している石である。さらに、名前と同じ音をもつ睡蓮の花。何かしら、未来の夫の心遣いを感じる、翠蓮であった。
しかし、驚くのは早いと侍女に指し示されたものに、翠蓮は釘付けになる。
肖像画があった。
褐色の肌、りりしい眉、黒い瞳、すっと通った鼻筋――。
挙げればきりがない程、麗しい青年が描かれていた。
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