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「……この方が」
花嫁を空の彼方で、心待ちにしている、その人であると告げられて、翠蓮の心は踊った。
「まあ、見てください。なんと豪華な羽根扇子をお持ちなのでしょう」
「いえいえ、上着の縁の刺繍も見事ですわよ」
「あら、ご覧ください。黒真珠の指輪をお付けになられてますわ」
侍女達が、口々に値踏みし始めた。
いつもなら、騒がしさに耐え兼ねて、叱りつける翠蓮だったが、なぜか今日は、このかしましさも楽しく感じられる。
「それにしても、うらやましいこと。このように麗しきお方の所へ嫁がれるのですから」
その一声を、翠蓮は待っていたのかもしれない。自分でも押さえ切れない思いが、翠蓮の口を動かせていた。
「私も、肖像画をお送りしなければ!」
蒸気した翠蓮の様子に、侍女達は微笑んだ。
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