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「ああ、違う!」
翠蓮の挙げた声に、絵師は震え上がった。
あれからすぐに、王宮お抱えの絵師が呼ばれ、翠蓮の肖像画が描かれていた。
「お願い。鼻をもっと高くして」
姫様、翠蓮の言いつけと、絵師はそそと筆を運び、所望に答えようとする。
「そうですわね、翠蓮様?首も少し長くされては?」
「あら、腰回りも、細くしませんと。飾り帯のせいで太く写っておりますわ」
侍女達が口をはさみ始めた。
絵師は、ちくいち頷いて、言われたままに筆を動かしていく。
「いいこと?あのお方には、美しい私をお見せするの」
翠蓮は、肖像画の若者に恋い焦がれていた。早く、嫁ぎたいとまで言い出して、父王を困らせていたのだった。
こうして、より美しく仕上がった翠蓮の肖像画が、花婿の元へ送られたのである。
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