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――そして。
険しい山道を越える十日をかけた、翠蓮の花嫁行列は無事に終わった。
獣道のような危うい経路は恐ろしかった。しかし、一行の、心細そかった思いは、ここの美しさのお陰ですっかり消え去っている。
噂通り空には虹が、神殿造りの正殿には、ふんだんに翡翠の飾り物が使われていた。
決して、凝った造りではないが、蕃国と虐げるのはどうかと誰もが感じるほど、一国として恥ずかしくない体が備わっている。
さて、従者がそのような事で感嘆しているなど、どこ吹く風。翠蓮は、一点を凝視していた。
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