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先にある玉座――。
その頭上に、翠蓮の肖像画が掲げられていた。隣りには、見覚えのある若者の肖像画があった。
王のお出ましを知らせる銅鑼が鳴る。
(もうすぐ、玉座に、あの方が……。りりしいお姿が拝見できる。)
翠蓮は、無礼にあたらない程度に顔を上げ、王の姿を見ようとした。
コツコツと、力強い足音をたてながら現れたのは――。
一瞬にして、翠蓮の体から血の気が引いた。
いや、それは、花婿も同じのようで、ぽかんと、ほうけた顔をし、一言――。
「そちは、誰だ?」
「……あなた様こそ」
玉座には、抜け落ちたような薄い眉に、糸のような細い目の、凡庸そうな中年の男がいた。
そして、花嫁としてかしずいているのは、まるで酒樽のように、ずんぐりとした年増女であった。
――玉座の上では、あまりに違いすぎる肖像画が、虹のように輝いていた。
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