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4 どうしていいのか分からない ①
小山の(αであるという)告白を受け、僕は今まで以上に聰さんの事で悩んでしまっていた。
僕は自らの想いを優先させてΩである事を小山に伝えなかった。
小山がずっと二次性判定の結果を気にしていたのも様子がおかしかったのも僕と友だちでいたかったからなのに、親友だと言いながらそんな事にも気づかず、ひとりでずっと悩ませてしまっていたんだ。
僕はいつも自分の事ばかりだ。
聰さんの事だって聰さんの優しさにつけこんで責任を押し付け我慢させ、聰さんの幸せの邪魔をしてしまっている。
聰さんに本当に愛する人が現れるまで、だなんて僕が傍にいてはそんなの無理な話だ。足枷を填めたままで自由にどうぞと言っているようなものだ、矛盾している。
僕は子どもでΩである事を理由にαである聰さんに守って貰っている。
こんなのはフェアじゃない。そこに愛情が少しでもあったならまだ分かるけど、僕たちの間には――僕からの一方的な愛とも呼べないようなふんわりとした想いしか存在しない。
最初から聰さんの手を取るべきじゃなかった。
そう思うのに聰さんの温かな手を離したくないと心が泣いた。
ああ……どうしたらいいんだろう――。
玄関でガチャリという音がして聰さんが帰って来た。
今日はいつもより大分早いようだ。
「ただい――ま? 何かあった?」
僕の顔を見るなり駆け寄ってきていつになく真剣な顔で問われた。
僕の少しの変化にも気づいてしまう――この人は本当にほんとうに……。
「何、も――」
何でもないと笑顔で答えなければ聰さんが心配するのにできなくて、ぽろりと涙が零れた。
聰さんはぎょっとして、そして何故か鼻をひくつかせ一瞬だけ眉間に皺を寄せた。
「――?」
いつもと違う聰さんの様子に涙なんか引っ込んじゃって、その時の聰さんの表情の意味が気になった。
だけど聰さんは僕の涙を大きな手でそっと拭うと優しく頭を撫でて悲しそうに微笑んだだけだった。
その時お互いに気持ちを打ち明けていれば、話はもっと簡単だったのかもしれなかった。
後で思うのは後悔ばかり。
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